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旅するオールドレンズ

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旅するオールドレンズ
澄んだ鏡面を見ているだけで、オールドレンズは旅愁を誘う。
見知らぬ街を、このレンズはどう写すだろう。あの空、あの建物、そしてこの空気感を、どう表現してくれるだろう。4名の写真家がお気に入りのオールドレンズを携え、それぞれの旅に出た。
公開日:2013/05/27

離島への小さな旅 飯田 鉄×伊豆大島

photo & text 飯田 鉄
東京都下とはいえ、竹芝桟橋からは100キロ以上離れた大島は、
亜熱帯植物も生い茂る火山島だ。少し春の訪れが遅かった日本列島。
そこでちょっとした南国気分も味わえる離島の大島をカメラとともに旅をしてみた。


海に囲まれた大島には3つの大きな港がある。島の北側にある岡田港は西側の元町港とともに本土を結ぶ定期航路の船が着く港である。条件がよければ港から富士山が眺められる。
OLYMPUS PEN E-P3 + G.Zuiko Auto-W 20mmF3.5 絞り優先AE f8 ISO200 AWB JPEG

3月末に調布飛行場から双発のコミューター、ドルニエ228に乗って伊豆の大島まで旅をした。気流が安定していたせいか、機体はそれほど揺れもせずに約
30分ほどで大島空港に降りたつ。大島に限らないが、島の旅はどこか心がくすぐられる。普通の旅に比べていつもの生活から、海によってさらに切り離された感じがするからだろうか。
大島は火山島だ。早速、三原山山頂までレンタカーで御神火スカイラインを登り、山頂入口の駐車場に辿り着く。そこからは噴火口まで徒歩である。登山道は勾配が緩やかに見えるが長い道のりなので実は手ごわい。眼の前にひろがる溶岩の眺めは凄い迫力だ。夏に生い茂る草木も枯れて荒々しい岩の肌が際立つ。火口をこわごわ覗いて三原山を車で下る。
旅は食べ物である。大島はもちろん海の幸が豊富、そして地物の明日葉などの新鮮な野菜。一泊した元町港に程近い民宿では刺身、焼き物、てんぷらとボリュームもたっぷりな夕飯をいただいた。
次の日は早起きをして波浮港にレンタカーを走らせる。いまだに漁師町の佇まいを残す港界隈の通りや旧港屋旅館を見て、昔の大島の賑わいを想像する。午後2時過ぎに岡田港からカメリア丸に乗り竹芝桟橋まで約4時間。大島まで二日間の空と海の旅、短いけれど少々贅沢な旅をしてみた。

唄や小説などで有名な波浮港は、いまでは漁に出る漁船などの母港となっている。港のそこここに漁具などを眼にすることができる。干してある赤い漁網は伊勢海老漁のものだ。
OLYMPUS PEN E-P3 + G.Zuiko Auto-W 20mmF3.5 絞り優先AE f5.6 ISO200 AWB JPEG


三原山を囲む溶岩地帯はやはり迫力のある光景だ。黒々とした溶岩がむき出しで延々と山頂まで連なる眺めには誰しも圧倒されるだろう。季節を変えて訪れてみたくなる。
OLYMPUS PEN E-P3 + G.Zuiko Auto-W 20mmF3.5 絞り優先AE f8 ISO200 AWB JPEG


都立大島公園の植物類は展示の規模も大きく、とても見事だ。椿はもちろん羊歯類や棕櫚、ヤシなどの亜熱帯の植物も本土の植物園で見るよりも生き生きと根付いている。
OLYMPUS PEN E-P3 + E.Zuiko Auto Macro 38mmF3.5 
絞り優先AE f5.6 ISO200 AWB JPEG


波浮港にはかつての港町を感じさせる佇まいの街並みが残されているが、ここではまたその内側の、今の暮らしも感じさせる路地裏の風景を紹介したい。漁師町の息づかいが匂う。
OLYMPUS PEN E-P3 + G.Zuiko Auto-W 20mmF3.5
絞り優先AE f5.6 ISO200 AWB JPEG


現行レンズに劣らないズイコーの精細な描写力


電子ビューファインダーVF-2を装着したオリンパスE-P3とGズイコーオートW20mmF3.5とEズイコーオートマクロ38mmF3.5。もともとオリンパスペンFをイメージさせるE-Pシリーズのデザインなので、まさに「電子化されたオリンパスペンF」のスタイルとなる。ちなみにフィルムのハーフ判はフォーサーズのセンサーサイズより面積は大きいので、当然ペンFレンズのイメージサークルは余裕がある。



今回撮影に持って行ったのはFOGGの鞄。しっかりした縫製と当たりの柔らかいキャンバス、そして上品な革のなめしが気に入っている。また、何かのときに役に立つライツの卓上三脚、遠くのものを確認したりルーペ代わりにもなるツァイス単眼鏡、そしてメモ用の野帳も持参している。

大島に持参したカメラはオリンパスE-P3。それになつかしのオリンパスペンF用のGズイコーオートW20ミリF3.5とEズイコーオートマクロ38ミリF3.5をマウントアダプターで組み合わせてみた。オリンパス的には純正の組み合わせになる。オリンパスE-P3は高速AF、豊富なアートフィルターなど機能満載モデルで、現行デジタルペンシリーズの旗艦とも言うべき存在だが、初代のペンE-P1からボディスタイルをほとんど変えず、私のようなユーザーにも馴染みやすい。オジサン的にはタッチパネルの操作も楽しい。今回はEVFファインダーVF-2を装着しての撮影が多かった。
撮影に使用した2本のペンFマウントの交換レンズは、カメラ本体同様コンパクトなスタイルにまとめられ、いかにも小型精密なオリンパス製品の伝統を感じさせる。コンパクトさではマイクロフォーサーズ用のズイコーデジタルレンズに劣らない。そして古い設計のレンズ群ながら、二本ともなかなかの画質を持っていることをあらためて実感した。なかでもマクロのズイコーレンズは実際に気持ちの良いシャープさで、現行レンズに引けをとらないよい性能を発揮した。ズイコーまさに恐るべし!


【使用機材リスト】
カメラ:OLYMPUS PEN E-P3+VF-2
レンズ:OLYMPUS G.Zuiko Auto-W 20mmF3.5/
OLYMPUS E.Zuiko Auto Macro 38mmF3.5
マウントアダプター:RJ Camera muk PenF-MFT

旅先:東京都大島町


より大きな地図で 伊豆大島 を表示
伊豆大島は三原山を中心に、東西9キロ、南北15キロの楕円形の島である。良く整備された道路で島を一周することができる。島内をくまなく見て回りたいときにはレンタカーを利用したほうが便利だ。足に自信があれば半日ほどかけて三原山を歩くのもよい。釣りを楽しむにも絶好の場所である。



玄光社MOOK オールドレンズ・ライフVol.2
オールドレンズを最新ベースボディで愉しむ
最新のミラーレスカメラ、オリンパスOM-D、PENをはじめ、富士フイルムX-Pro1、ニコン1、ペンタックスQ、リコーGXR MOUNT A12、ソニーNEX-7などと相性の良いオールドレンズは何かを徹底チェックします。また、オールドレンズの新カテゴリー“シネレンズ”の基礎知識とおすすめレンズ、最新アダプター、旅ギャラリーなど、オールドレンズをより実践的に楽しむためのハウツーを満載した1冊です。 監修・執筆:澤村 徹


飯田 鉄(イイダ・テツ)

足立区北千住生まれ。変化する都市の景観や庶民の生活事象を継続的に撮影中。カメラ、レンズなどに関する著作活動も行う。1987年度日本写真協会新人賞受賞。現在武蔵野美術大学非常勤講師。