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イベントレポート

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イベントレポート
公開日:2019/08/15

フィルムカメラからオールドレンズまで勢揃い【中古カメライベントレポート】第11回 新宿クラシックカメラ博

photo & text 鹿野貴司


2019年8月14日(水)から20日(火)まで、第11回「新宿クラシックカメラ博」が新宿高島屋11階・催事場で開催されている。主催は写真機商振興会。今回は日本各地のカメラ店21店と、用品メーカー2社が出展している。

出展しているカメラ店のほとんどはネット通販も行っているが、中古カメラは同じ機種でも一台一台コンディションが異なる。また中古市場になかなか現れない機種は、実物を見ることすら難しい。そのためありとあらゆる中古カメラが並ぶこのイベントは、ネット通販が当たり前になった今でも多くの人が集まる。今回は初日のオープン前から取材していたが、新宿高島屋の開店と同時に、大勢の人が会場になだれ込んできた。

珍品もあちこちで見かけたが、全体としてはコレクションアイテムよりも実用品がメイン。個人的にはフィルムの中判カメラが少し目立つような印象を受けた。またフルサイズのミラーレス機をニコン・キヤノン・パナソニックが相次いで発売したこともあるのか、マウントアダプターで介してそれらのカメラで使えるオールドレンズも依然として熱いのが品揃えから伝わってきた。

17日(土)には塙真一さんと片岡三果さんが「オールドレンズで楽しむ最新デジタル」、18日(日)は斎藤巧一郎さんが「楽しもうクラシックカメラ」と題して、それぞれ13時からトークショーを行う。また両日にはジャンク品コーナーや、デジタル一眼レフ(ニコン・キヤノン)のセンサー清掃コーナーも設けられる。

実に多種多彩なカメラが揃う今回のイベントだが、今もフィルムカメラを多数愛用する筆者が、会場で見つけたオススメのカメラやレンズを紹介する。
*掲載した商品は、取材時にイベント会場で販売されていたものです。すでに販売済みの可能性もございます。
*価格はすべて税込み



ゼンザブロニカS2+ニッコール75mmF2.8 元箱付き 33,000円
(8月15日記事公開時には販売済み)
大塚商会

フィルムカメラの定番といえば6×6判。そして6×6判といえばハッセルブラッド500シリーズやローライフレックスが人気だが、どちらも程度のいいものを買おうとすると10万円は下らない。それに対して国産のゼンザブロニカならこんなに手頃。S2は東京五輪の翌年、1965年の発売だが、ボディはピカピカ、おまけに珍しい元箱付きだ。

シャッターを切るとファインダー像がブラックアウトするハッセルブラッド500シリーズに対し、このS2はなんとクイックリターンミラーを採用。撮影結果を左右する部分ではないけれど、フィルムカメラ初心者にも使いやすいことは確かだ。シャッターの最高速度も1/1000秒と、ハッセルブラッド500シリーズより1段速い。ボケを活かしたいときに1段絞りが開けられるというのは大きい。




ライカ・ズミルックス35mmF1.4(2nd)
左は320,000円、右のチタンは390,000円
ステレオカメラ


クセ玉として有名な、いわゆる「球面ズミ」。製造期間が長いため初代より入手しやすく、状態がいいものも多い。逆光や点光源がある状況では、絞り開放でソフトフォーカスのような描写をする。そこから絞っていくと一転してシャープに。絞りで描写をコントロールできるという、使いこなす楽しさのあるレンズだ。

外装のバリエーションが多いのも特徴で、左は1990年とほぼモデル末期に作られた個体。右はM6チタンとセットで販売されたチタン外装で、やはり1992年製と新しい。この後35mmF1.4は非球面レンズが採用され、開放からシャープな写りをするとともに、鏡筒も大柄になっていく。好みもあるが、ライカをライカらしく味わうならこちらがオススメだ。




チノン・ベラミ ストロボ付き 19,440円
カメラのゴゴー商会


筆者が初めて一眼レフを使ったのは30年近く前だが、そのカメラに着いていたのはチノンの高倍率ズームだった。廉価な交換レンズや他社のOEMで日本カメラ界に一定の地位を築いていたチノンだが、その最高傑作といってもいいのがこのベラミだ。

発売は1981年で、レンズバリアに左右への観音開きを採用。巻き上げレバーを巻き上げるとバリアが開き、沈胴していたレンズがせり出す。バリア前面にはなぜか馬車のレリーフが描かれていて(輸出仕様にはないらしい)、エレガントさも感じられる。レンズは35mmF2.8で、ピント合わせは目測式。露出制御もプログラムという簡素な仕様だが、手にするとなぜか愛おしくなるカメラだ。正直、筆者も購入すべきかどうか迷いました(笑)。




富士フイルムX-T2 縦位置パワーブースターグリップVPB-XT2・元箱付き 85,000円
スズキカメラ商会


「新宿クラシックカメラ博」というイベント名の通り、各ブースに並ぶのはほとんどがフィルムカメラなのだが、一部デジタルカメラも販売されている。よく見ると掘り出し物もあり、このX-T2も縦位置グリップが付いてこの値段。型落ちになってまだ1年も経っていないのに、新品の半額以下で買えてしまうのだ。

現行のX-T3と比べるとセンサーが一世代前で、EVFのドット数も少なく、ブラックアウトフリー連写やタッチパネル機能がない……などと書き連ねていくと、なんだか劣っているように見えてしまう。しかし実際のところ、発売からまだ3年も経っていない。比べなければ何の不満もないだろうし、むしろ中古市場でお買い得なモデルといえる。




レオタックスT/キヤノンIII型 ともに20,000円
愛好堂カメラ


第二次大戦中の日本では、ライカの輸入が止まったことから、いくつかのメーカーがライカコピーを製造。戦後もドイツが敗戦によって特許を無効化したことから、さらに多くのメーカーが参入した。その代表格が戦前からライカを分解して完全なライカコピーを製造していたレオタックス(昭和光学精機)と、それとは対照的に独自技術でライカの特許を回避したキヤノンだ。

ともにL39マウントを採用したバルナックライカのコピーというか“ジェネリック”を大量に生産。レオタックスTは1955年発売。前年に登場したFから1/1000秒を省いた廉価版だ。キヤノンIII型はそれより少し古い1951年発売。L39マウントレンズをミラーレスのデジタルカメラで使う人も多いが、これらのボディがあればフィルムでも楽しめる。終戦から10年足らずでこれだけの精密機器を作っていた先人たちに感服。




ローライフレックス2.8C(クセノター80mmF2.8) 128,000円
鈴木特殊カメラ


中古市場で依然として高値が続くローライフレックス。定番中の定番・2.8Fになると20万円超えが当たり前だが、Cまでさかのぼると掘り出し物もある。この値段できれいな本革ケース、さらに元箱まで付いている。筆者も長くローライフレックスを愛用しているが、元箱を見たのは初めて。こんなに素敵なデザインだったとは知らなかった。

2.8Cは1960年発売の2.8Fより3世代前になるが、実際のところ1953年発売で2.8Fよりそれほど古いわけでもない。何より2.8Cは絞り羽根が10枚もあり(2.8D以降は5枚)、絞ってもきれいな玉ボケを維持できるのは他モデルにない強みだ。ちなみにレンズはカールツァイスのプラナーではなく、シュナイダー・クロイツナッハのクセノターを搭載。市場ではプラナー搭載モデルの方が人気だけど、2.8Cのレンズは当初クセノターしか存在せず、後からプラナーが追加されたという歴史もある。




ドリュー2-16ピストルカメラ+ホクター17mmF2.7、薬莢2発付き 1,350,000円
カメラのヤマゲン


筆者が今回会場を見渡した中で、もっとも高値を付けていたカメラ。見落としている可能性を考えたとしても、五指に入るのは間違いないだろう。警察へ納入するため1954年に製造されたピストルカメラ。トリガーを引くと映画用の16ミリフィルムに撮影。同時にマグネシウムの閃光弾が光る。

果たして警察がどんなシチュエーションでこのピストルで発砲……いや発光するのかと思ったら、射撃訓練用らしい。終戦間もない頃で実弾が乏しく、ピストルとカメラが合体したこれで射撃の精度を判定したそうな。考えた人は天才である。ドラマやマンガでは「拳銃を撃ちまくる刑事」がよく登場するが、このカメラを支給すれば名作をいっぱい撮影できるのに……などと思ってしまった。




左からオリンパスペンD 12,000円、オリンパスペンS 12,000円、オリンパスペン 20,000円
ハットリカメラ


中古市場で根強い人気を誇るのがオリンパスペンシリーズ。もちろんフィルムの方のである。いやデジタルの方もそこそこ人気はあるのだが。

レンズ交換式のペンFにも根強いファンがいるのだが、ハーフサイズゆえの小ささやデザインのかわいらしさから、カメラ女子にはこれらレンズ固定式の方が人気。最近はフィルム代や現像代も高くなって、パッケージの表記より倍の枚数が撮れる点も、若い人にはありがたい。筆者のようなおじさんにももちろんありがたいので、ペンはいろいろ持っているが、どれも本当によく写りますぜ。




コンタックスIIIa+ゾナー5cmF2 27,000円
日東商事


第二次世界大戦直後、東独にあったコンタックスの工場をソ連が接収。そこで1950年、西独で新たにツァイス・イコン社が設立された。その翌年に発売されたのがこのIIIaだ。よく同世代のライカと比較されるが、正直こちらの方がかなり使いにくい。けれど金属の塊といった趣きはライカより断然上。

レンズは戦前に製造されたと思われるカールツァイスイエナ銘のゾナー。マウントアダプターを介せば、ふわっと柔らかい描写をデジタルでも満喫可能だ。ちなみに沈胴式のレンズなのに、沈胴したまま撮影してしまいましたスミマセン。でも沈胴した姿の方がボディとの一体感があって美しいなと思ったり。




コンタレックスII+カールツァイス・プラナー5cmF2 105,000円
藤井商店


ツァイス・イコン社がフラッグシップモデルとして開発した35mm判一眼レフ。これは1964年発売でシリーズの2世代目にあたる。レンズの上にある大きな丸は露出計。とても高価なうえ、大きくて重たいことからまったく売れず、シリーズを通しても短命だった。それゆえ、他人とは違うフィルムカメラが欲しいという人には強くオススメしたい。これは程度もよく、強いインパクトを与えること請け合いだ。

レンズはカールツァイスのプラナー5cmF2が付属。当然ながら西ドイツ製で、後年日本で製造されるカールツァイス製レンズよりもさらにこってり濃厚な描写といわれている(さすがに筆者も試したことはないです)。マイナーなコンタレックスマウントだが、ちゃんと主要なマウントへ変換できるアダプターが各社から発売されている。そう考えるとお買い得な一品だ。


 

<イベント情報>

第11回 新宿クラシックカメラ博

会期:2019年8月14日(水)〜20日(火)
開催時間:10:00〜20:00(8月16日(金)・17日(土)は20:30まで、最終日は16:00閉場)
会場:新宿高島屋 11階催会場
東京都渋谷区千駄ヶ谷5丁目24番2号
https://www.takashimaya.co.jp/shinjuku/topics/event.html
入場無料

主催:写真機商振興会
企画協賛:ワールドフォトプレス(モノ・マガジン)

 

写真機商振興会のサイトにて出品予定商品の案内がされているので、事前にチェックすることができる。

写真機商振興会
http://www.camera.jp/

【参加店】
愛好堂カメラ / アートカメラ / 大塚商会 / Okadaya / カメラのゴゴー商会
カメラのハヤシ商事 / カメラのヤマゲン / スズキカメラ商会 / 鈴木特殊カメラ /
ステレオカメラ / セキ写真 / 日東商事 / ハットリカメラ / 藤井商店 / 
元町カメラ / ユーシーエス / ワカイカメラ (五十音順) 

 
鹿野貴司(しかの たかし)

1974年東京都生まれ。多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、フリーの写真家に。広告や雑誌の撮影を手掛けるほか、ドキュメンタリー作品を制作している。写真集『日本一小さな町の写真館 山梨県早川町』(平凡社)ほか。著書「いい写真を撮る100の方法(玄光社)」

ウェブサイト:http://www.tokyo-03.jp/
Twitter:@ShikanoTakashi

<著書>

いい写真を撮る100の方法
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