カテゴリから検索
緑のロッコールとして有名なミノルタロッコールPF58mmF1.4。このレンズは1961年に登場したAutoRokkor58mmF1.4の後継レンズとして1966年にリリースされた。『緑』とはレンズコーティングの色でアクロマチックコーティングというミノルタ独自のコーティングの色だ。戦時中は軍事技術としてトップシークレットだったコーティング技術も戦後は様々な光学商品に使われるようになった。アクロマチックコーティングもその一つだ。
そんな当時、最先端技術を盛りいれたこのレンズであるが、僕が推したいポイントは違う部分にある。それはこのレンズが6枚構成という点だ。レンズ枚数はレンズの性能と密接な関係がある。レンズ枚数が多ければ多いほど補正できる収差(光学的不具合)は多くなる。明るいレンズを作る際も同じことがいえる。
明るいレンズを作るためにはレンズの口径を大きくするか、レンズの枚数を増やすか、屈折率の高い硝材を使う必要がある。口径を大きくするとコンパクトな製品は望めない。屈折率の高い硝材はコストがかかる。そのため世の中のF1.4クラスの一眼レフ用レンズのほとんどが、「7枚構成」を採用している。そんな中このレンズは6枚構成を採用した。
6枚構成の開放値F1.4レンズは、珍しく面白い写りが期待できるのだ。もちろんここで言う面白い写りとは個性的な写りのことである。早速、写りを見てみたい!
SONY α7R 1/30秒 F1.4 ISO160 WB:マニュアル
モデル:姫宮らん
ピント部と周辺部のギャップがすごい。ピント部はしっかり解像しているが周辺部はかなり甘い描写である。周辺部の甘さもありボケはかなり柔らかく見える。
SONY α7R 1/30秒 F1.4 ISO160 WB:マニュアル
発色は非常に良い。2層コートである「アクロマチックコート」の良さがわかる。
SONY α7R 1/30秒 F1.4 ISO160 WB:マニュアル
前ボケが柔らかいので大胆に前ボケを入れることで印象的な写真になる。
前ボケを作るコツは前ボケに使うモチーフをレンズになるべく近づけること、多少の透過性のあるモチーフを選ぶこと、逆光のシチュエーションで使うことがあげられる。この写真では商店街の装飾に使われていたモミジの造花を使った。薄いプラスチック製の葉で多少の透過性があり前ボケにはもってこいだ。花びらくらいの透過性が前ボケにはベストのモチーフになる。
SONY α7R 1/30秒 F1.4 ISO50 WB:マニュアル
このレンズの真骨頂はこの虹ゴーストだ。よくある虹ゴーストは弧が下を向くがロッコールは反対に上を向く。ほぼ平行の線状の虹ゴーストも出ている。MCロッコールPF、特に後期型は虹が出やすいようだ。
SONY α7R 1/160秒 F1.4 ISO100 WB:マニュアル
逆光をうまくハレ切りすることでしっかりとした描写になる。背景のボケとのギャップで絶妙な立体感が出る。肌の質感表現も絶妙だ。オールドレンズはふわっとした描写が特徴と思われがちだがしっかり光をコントロールしてゆけば切れ味のあるシャープな写りをすることも少なくない。写りの可能性にリッミッターをかけていないオールドレンズは撮影者の技量により様々な表情を見せてくれる。
SONY α7R 1/160秒 F1.4 ISO100 WB:マニュアル
ロッコールも使い手のコントロール次第で色々な表情を見せてくれる面白いレンズだ。レンズ枚数が少ないことで制約が出来た分レンズの個性がはっきりと出ている。このレンズは解像力をやや控えめにする代わりに諧調と発色で被写体を捉えているレンズだと思う。逆光ではフレアが出るものの素直でコントロールしやすいレンズになっている。そのため様々なシーンで活躍できる。オールドレンズの面白さを手軽に体験できるいいレンズだと思う。
モデル:姫宮らん
2023/01/13 | |
▶ | PENTAX Takumar 58mm F2 一眼レフ黎明期のタクマー |
2021/12/05 | |
▶ | KONICAの6枚玉大口径レンズ Konica Hexanon 57mm F1.4 AR |
2021/02/01 | |
▶ | 素朴な描写が魅力の6枚玉 Minolta Rokkor PF 58mm F1.4 |
2020/08/27 | |
▶ | オールドレンズの定番Super Takumar 50mm F1.4 前期8枚玉と後期7枚玉の比較レビュー |
2020/04/16 | |
▶ | キヤノン FL58mm F1.2 大口径オールドレンズで撮るポートレート |