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Traveler`s Photo Diary

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Traveler`s Photo Diary
公開日:2023/11/22

1999年〜2002年 富山【ポジフィルム編】

Photo & Text 野寺治孝

撮影場所:富山県上市町(以下同)ハッセルブラッド500C/M マニュアル ISO100
Kodak エクタクローム E100VS 80mm F2.8

富山県を撮ったのには個人的な理由があります。

縁あって結ばれた家内が富山県上市町の出身でした。盆と暮れには必ず帰郷していましたが、正直に言えば何もない退屈な場所でした。当時の私はアメリカやハワイに魅かれていましたので、まったく写欲をそそられない風景でした。

そんなある日、胆石症になってしまい手術を秋に控えての盆帰省をしました。体と心が少し弱っていたせいでしょうか、退屈は田舎の風景がとても愛おしく見えてきたのです。
「思えば私の生まれた浦安も昔はこんな風景だった。懐かしいなあ」
自然とそう思えてきて、カメラを向けるようになりました。

ここに写っている人物はすべて家族です。先ずは家族を中心に撮り、撮影範囲を徐々に広げて行きました。そんなある日、撮影のヒントになるかも知れないと思い義母と義父にこんな質問をしてみました。「幸せってなんですか?」
義母は「子供たちの幸せ」と答え、義父は「・・・安らかに死にたい」と呟きました。それを聞いていた義妹は「一番、夢のない答え!」と大笑いをしていましたが、高齢化社会の今となってはそれは正しく本当に“夢”かも知れません。

富山県の風光明媚な風景、例えば館山連峰の剱岳やおわら風の盆などにはまったく興味がないので、あくまでも私らしい視点で撮影を進めていきました。
田舎町とは言え、帰省するたびに新しい建物が立ち、個人商店がコンビニに代わって行きました。実際、実家でも古い建具のガラス戸がサッシに変わりました。義母に「なんだか味気がなくなりましたね」というと「冬場が寒くてかなわないからね。暖房費も安くないし」そうなんです。時々行ってあげ膳据え膳に甘えている都会に住む私などには分からい生活がここにはありました。

富山に限ったことではありませんが「せめて残せるのは写真だけ」と思いながら毎年帰省し、私にとっての“第二の故郷”富山をデジタルになった今でも撮り続けています。

【ネガフィルム編はこちら



ハッセルブラッド500C/M マニュアル ISO100 Kodak エクタクローム E100VS 80mm F2.8


舟橋村
ハッセルブラッド500C/M マニュアル ISO100
Kodak エクタクローム E100VS 80mm F2.8 接写リング使用

ハッセルブラッド500C/M マニュアル ISO100 Kodakエクタクローム E100VS 80mm F2.8


JR富山駅
ハッセルブラッド500C/M マニュアル ISO100
Kodak エクタクローム E100VS 80mm F2.8


富山地方鉄道車内
ハッセルブラッド500C/M マニュアル ISO100
Kodak エクタクローム E100VS 80mm F2.8


ハッセルブラッド500C/M マニュアル ISO100 Kodak エクタクローム E100VS 50mm F4

ハッセルブラッド500C/M マニュアル ISO100 Kodak エクタクローム E100VS 50mm F4


ハッセルブラッド500C/M マニュアル ISO100 Kodak エクタクローム E100VS 80mm F2.8

<野寺治孝の使用カメラ>


ハッセルブラッド 500C/M
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野寺治孝 NODERA HARUTAKA
1958年千葉県浦安市生まれ。
本郷高校デザイン科、にっかつTV映画芸術学院卒業。広告デザイン事務所、郵便配達員、牛乳販売業など職を転々とするが1984年にポストカードの自費制作販売を機にプロ写真家として活動を開始する。1991年に「有限会社スローハンド・野寺治孝写真事務所」を設立。多岐にわたる被写体を空気感とストーリーを感じさせる独自の作風で多くの作品を発表している。


<主な著書>

個性あふれる“私らしい”写真を撮る方法


カッコいいスナップ写真の撮り方


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レンズ1本で撮るフォトレシピ
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