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カメラアーカイブ

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カメラアーカイブ
巷に溢れる新製品情報。そんな情報の波に埋もれてしまっている魅力的なカメラたちがある。メーカー開発者たちが、心血を注いで創りだした名機の魅力を蓄積していく。
公開日:2013/02/16

ニコン F2 & F2フォトミック

photo & text 赤城 耕一

ニコンF2 進化し、拡張していく名機


ニコンF2 フォトミック

ニコンF2の登場は1971年。Fの後継機として登場。1980年に登場するF3は電子シャッターが採用されたから、フラッグシップ機2代めとして最後のフルメカニカルシャッター搭載カメラになる。基本ボディはCdsを受光素子としたTTLメーターを内蔵したフォトミックファインダー(DP-1)を装着した「F2フォトミック」である。これはカラー時代を意識したからだろう。

Fからの大きな改良点はシャッターボタンの位置がボディ前に置かれたこと、電池室がボディ側にあること、裏蓋が蝶番式になったこと、2000分の1秒の高速シャッター採用、モータードライブの無調整装着可能など多数あるが、Fと比較して機能的に大きな進展はあったとは言い難い。けれどシャッターは15万回という耐久力を誇り、プロ用カメラとして絶対的な位置にあった。視野率は約100パーセント。なおファインダー表示をLEDとしたフォトミックSファインダー(DP-2)を装着したF2フォトミックSは1973年に発売されている。

1977年にニコンはレンズの開放F値設定を自動化した「Ai方式」を採用。F2はボディには一切手を加えずファインダーを改良してフォトミックA(DP-11)とフォトミックASファインダー(DP-12)を発売してAi化に対応した。当時のAi方式の広告は「ニコンを変えずにニコンを変えた」とコピーが打たれたが、これは旧ニッコールレンズも改造を施すことで、Ai方式に対応することができたからだろう。ことF2に限っては、ボディにもこのコピーが当てはまることになるわけだ。


フォトミックイルミネーターDL-1
フォトミック、フォトミックAファインダーは指針式で外部からの明かりを取り込んでファインダー内に表示するのだが、暗い場所では当然指針が見えにくくなる。フォトミックイルミネーターは、指針窓を照明するためのアクセサリー。水銀電池1個を使用する。

フォトミックファインダーの交換
フォトミックファインダーを取り外すにはボディ背面のボタンとファインダー側のレバーを押しながら倒して上に引き抜けばよい。ファインダースクリーンはFと互換性がある。

ミラー支持金具
初期型 後期型
一眼レフはミラーの角度が高精度に維持されていなければならない。初期型のほうは一本の金具で保持しているが、後期型になるとY字型の金具に変更されている。理由は不明だが、耐久力を増すためだろうか。

巻き戻しクランク
初期型 後期型
初期型はFのデザインのものに近く、やや不安定で巻き戻しもしづらいものだったが、後期になると肉厚になり操作しやすいように改善されている。デザイン的には初期のもののほうがよい感じがするのだが。



ニコンF2(アイレベル)
アイレベルファインダー(DE-1)装着のニコンF2はメーターを必要としないユーザーのために用意されたもの。当然、F2フォトミックよりも軽量である。デザイン的にはFのそれと近いけれど、メーター本体はファインダー内に収めるという思想がFからそのまま踏襲されているわけである。
F2とほぼ同時期に登場したキヤノンF-1は、メーターをボディ内に収めたため、スマートな形になったわけだが、ニコンとキヤノンの設計の方向性が分かれたことになる。F2のアイレベルを基本として、その後にチタンボディも登場するけれど、これもメーターを必要としないプロ用機としての矜持というものであろうか。
メーターは経年変化による狂いや、故障のリスクがあるから、中古市場ではこのF2アイレベルのほうが高価な値付けをされていたりすることが興味深い。他のファインダーとしてはウエストレベルファインダー(DW-1)アクションファインダー(DA-1)高倍率ファインダー(DW-2)などがある。

シャッターチャージ指標について
シャッターダイヤル中央にある黒線はシャッターがチャージされている時は水平に、チャージされていない時には7時方向に位置する。Fにも同様の機能があったが、フォトミックファインダーを装着すると見えなくなる。F2独自の機構といってもよい。
 


ニコンF2+モータードライブMD-2
モータードライブMD-2はF2専用。最高5コマ/秒の連写を可能として、フィルム巻き戻しも自動化されている。Fと異なり、無調整互換なので制約はない。ただ、Fと同様にコマ速度によって、使用シャッターに制限がある。Lでは1/4秒以上、M2では1/8秒以上、M2では1/60秒以上、M3とHでは1/125秒以上のシャッタースピードに設定する必要がある。これを守らないと露光中に巻上ってしまうので注意したい。フィルムカウンターは逆算式で、使用フィルムによりコマ数を設定する必要がある。裏蓋はMD-2専用の「カメラバックMF-3」。フィルムの自動巻き戻しを自動停止することが可能。またフィルムのリーダー部を残すことができる。自動現像機に入れる際の手間を省くためだと思うが、反面、露光したフィルムを再装填してしまう事故が起こる可能性があるから注意する必要がある。







ニコンF2 AS+EEコントロールユニットDS-12
カメラの発展は自動化と同義であり、F2が登場した当時は露出の自動化(AE)をいかに実現するかがメーカー共通の目標だったように思う。

フルメカニカルカメラであるF2とAEはそぐわないと思うのだけれど、F2フォトミックSとSBにはEEコントロールユニットDS-1とDS-2が、フォトミックASにはDS-12が用意されサーボモーターコントロールによるシャッター速度優先AEを可能とした。

もっともAEといえど、設定した任意のシャッター速度に対してモーターのチカラを使って適正露出値まで絞り環を回してしまえというシロモノなのである。言い換えれば指で絞り環を回すかわりにモーター動力を使用したのだ。おそらく無人撮影などに使用されたのではないかと推測される。

写真のF2フォトミックASとEEコントロールユニットDS-12は発展型ではあるものの動作は同じ。ただし、フォトミックSファインダーの受光素子は応答速度の遅いCdsだったのに対して、ASではSPDとなり、応答速度は飛躍的に向上した。
 
DS-12の動作ボタン。押すと電源がオンになる。ダイヤルの位置によっては常時測光が可能なようにもできるが電池消耗が大きいようだ。 巻き戻しクランクを持ち上げて、ストロボ用のシューにカップリングさせる方式。固定するのはカメラ前面のシンクロターミナルのネジを使用するため、前面には独自のターミナルが新たに設けられている。

EEコントロールユニット
 
EEコントロールユニット動作
 
ニコンF2 モータードライブ装着時のフィルム巻き戻し動作
 
赤城耕一 ニコンFとF2のシャッター音について語る。
みなさんは、FとF2のシャッターの響き方について、違いがわかりますでしょうか?
音量を大きくするか、ヘッドホンで聞くとわかり易いです。


 
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赤城耕一
東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。

主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社)

ブログ:赤城耕一写真日録
 
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