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初期のOM-4Tiは、シャンパンカラーのチタン外装採用で、美しいカメラであった。最大の特徴はOM-4から引き継いだ8点までのマルチスポット測光に加えて、専用ストロボを使うことで2000分の1秒まで同調が可能なフルシンクロフラッシュを装備していたこと。オリンパスはTTL自動調光ストロボのパイオニア的な存在であるから、さらなる飛躍を遂げたかにみえた。 しかしである。フルシンクロフラッシュはストロボ側の閃光時間を長くして対応させようというものだから、シャッター速度が高速側になると、ストロボのGN(ガイドナンバー)は極端に小さくなった。理論的には被写体までの距離が近く、なおかつ絞りを開かないとその効果はあまり認められなかったのだ。このこともあり、さほど高い評価は得られなかったようだ。 縦走りの金属シャッター採用による高速シンクロが一般的になってきたのだがOM-4Tiはあくまで横走り布幕のシャッターのまま、高速シンクロを実現しようとしたのだ。しかもOM-2と同様に絞り優先AE時しかTTL自動調光は機能しないので、任意のシャッター速度を選ぶことができないため、スローシンクロ撮影では、依然として、外部オートかマニュアルに頼るしかなかった。いろいろと機能的な制約はあるけれど、2000分の1秒までストロボを同調させようとした執念は評価してもいいかもしれない。 OM-4からのマルチスポットは任意に測光した数カ所のスポット測光値から演算して露出を割り出そうというもので、輝度差の大きいところでもバランスのよい露出になるというふれこみではあった。最大で画面内で8カ所の測光が可能で、それぞれの値を記憶し演算する。しかし、画面内で8点まで測光してしまうと、平均測光と何ら変わらないということにもなりかねない。またフィルムの違いによるラチチュードの差が加味されるわけでもない。しかも、TTL測光は被写体の色や反射率によって、大きく左右されることもあり、これも経験則によって大きく左右されることがあった。 しかしながら、OM-1からのボディサイズにこれだけの機能を凝縮することができたのだから大したものである。1989年にはチタンブラックボディが登場してシャンパンカラーのモデルは製造が中止される。モータードライブやワインダーはすべて互換性があるが、最高性能を発揮させるには「モータードライブ2」を使用するのがベストだ。 |
![]() | 36枚撮りのフィルムを装填した時の画面表示。カウンター表示は減算式。任意のコマ数にセットして途中停止も可能。またコマ数セットをフリーにしたままにすることもできる |
![]() | カウンターが0を差すと、カメラの裏蓋を開けて、フィルムを交換せよというアイコンが表示される。 |
オリンパス OM-4Ti+モータードライブ2の使い方 解説:赤城耕一 |
![]() | OM-4Tiとほぼ同じレイアウトだが、マニュアル露出のメカニカルカメラで、ここまで凝った測光機能を内蔵した機種はこれのみである。実際に1点スポットで設定して使うほうがはるかに使いやすいし、露出のコントロールも容易だと思う。 |
![]() | OMの生みの親である米谷美久氏には生前、何度か実際にお会いして、取材をさせていただいた。そのおりにメモホルダーにダイヤモンドカッターでサインを入れていただいた。2002年なのでOMの終焉が発表された年だったと記憶している。 |
![]() | 赤城耕一 東京生まれ。出版社を経てフリー。エディトリアルやコマーシャルの撮影のかたわら、カメラ雑誌ではメカニズム記事や撮影ハウツー記事を執筆。戦前のライカから、最新のデジタルカメラまで節操なく使い続けている。 主な著書に「使うM型ライカ」(双葉社)「定番カメラの名品レンズ」(小学館)「ドイツカメラへの旅」(東京書籍)「銀塩カメラ辞典」(平凡社) ブログ:赤城耕一写真日録 |
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