銀塩手帖
公開日:2017/04/21
モノクロフィルム・レポート「JCH STREET PAN 400 BLACK & WHITE FILM」
photo & text 大村祐里子
フィルム関連のニュースが流れるたび「今度はこのフィルムが生産中止になってしまった!」とか「こんなに値上がりしてしまった!もう買えない!」というユーザーたちの悲痛な叫びでSNSが溢れかえるこんな世の中に……朗報です!
少し前になりますがJAPAN CAMERA HUNTERというWebサイトを運営するBellamy Huntさんが、新しいモノクロフィルム「JCH StreetPan 400」を発表しました。
公式サイトによると、フィルムの負の連鎖を止めるには自分が動くしかないと感じたBellamy Huntさんが、最も使用頻度の高いISO400のモノクロフィルムをつくってしまおう!と思い立った結果生まれたのがこの「JCH StreetPan 400」なのだそうです。アグファのディスコンになったフィルムをベースに開発されたようですが、古いフィルムを再販売しているわけでも、既存のフィルムを別のパッケージに詰め直したわけでもない、完全に「新しい」商品とのことです。
35mmフィルム(36枚撮り)が994 円。コダックのトライ-X 400が900円弱、T-MAX400が1,000円弱、イルフォードのデルタ 400が1,000円強であることを考えると、違和感のない価格です。赤と黒でまとめられた、若者受けしそうなパッケージデザインもインパクト大です。
ワクワクした気持ちを抑えられぬまま、早速、愛機であるNikon NewFM2にJCH StreetPan 400を装填して撮影をしてみました。現像は、原宿にあるナショナル・フォートさんにお願いしました。こちらのお店では、JCH StreetPan 400の現像を受け付けています。(※JCH StreetPan 400は、一部のラボでは現像不可なので注意が必要です)仕上げはノーマルです。それらをGT-X970というフィルムスキャナーでスキャンしたものを以下に掲載します。
Nikon NewFM2+AI Nikkor 50mm f/1.4S
小屋で昼寝している豚を撮影しました。豚の上にある窓から光が差し込んでおり、背中のハイライト部分が飛んでしまうかなと思っていたのですが、やはり少し飛んでしまいました。ハイコントラストのフィルムを使うときは、ハイライト部分の白トビに注意が必要です。
Nikon NewFM2+AI Nikkor 50mm f/1.4S
寝ている子羊をハイキー目に撮影しました。被写体と背景の輝度差がない場所でシャッターを切ったのでもっとローコントラストな仕上がりになると予測したのですが、子羊がしっかりと描写されていて驚きました。
Nikon NewFM2+AI Nikkor 50mm f/1.4S
Nikon NewFM2+AI Nikkor 50mm f/1.4S
Nikon NewFM2+AI Nikkor 50mm f/1.4S
羊の群れを、逆光下で撮影しました。暗部のディティールもしっかり描写されており、フィルムのラティチュードの広さを感じることができます。個人的には暗部の適度なザラザラ感が好み。
Nikon NewFM2+AI Nikkor 28mm f/2.8S
草花を撮影しました。こういった、被写体を浮き上がらせてナンボ、みたいな写真にはぴったりのフィルムではないでしょうか。
Nikon NewFM2+AI Nikkor 50mm f/1.4S
雪の積もった森の小道を撮影しました。かなり露出不足だったのですが、ラティチュードの広さに助けられ、雪のディティールをある程度まで出すことができました。露出の失敗が多い人にはありがたいフィルムです。
Nikon NewFM2+AI Nikkor 28mm f/2.8S
Nikon NewFM2+AI Nikkor 50mm f/1.4S
飛行機の中から、窓の外に広がる雲を撮影しました。ハイコントラストな描写が、雲の立体感をより強調しているように思います。
Nikon NewFM2+AI Nikkor 50mm f/1.4S
飛行機の中から、雪の積もる地表を撮影しました。ハイコントラストゆえに白と黒が明確に分かれて、インパクトのある写真に仕上がりました。
Nikon NewFM2+AI Nikkor 50mm f/1.4S
使ってみた感想ですが……まず、Bellamy Huntさんが「I wanted something bold, slightly grainy and with a strong contrast.」(私は微粒子でハイコントラストの強いフィルムが欲しかった)と述べている通り、ザラザラした感じが少なく、とにかくコントラストが高いフィルムに仕上がっていることに驚きました。コントラストが高いゆえに、とてもリアルかつ被写体が浮き出してくるような描写には舌を巻きました。ただ、コントラストが高いあまり、ハイライト部分が白トビしやすいので注意が必要だな、とも思いました。
個人的に、コントラストが高くリアルに写るコダックのT-MAX 400に似ているような気がしました。わたしはハイコントラストでバッキバキに写るモノクロフィルムが好みなので、T-MAX 400はもちろん、このJCH StreetPan 400の描写は自分に合っていたように感じました。しっかりと強く描写されるので「わたしは今日モノクロ写真を撮っているの!」と実感したいような日に使うと良いかもしれません。
ただ、以上のようにハッキリとした個性をもったフィルムなので、もしかしたら体質に合わない方もいらっしゃるかもしれません。繊細で絵画的な描写がお好きな方はコダックのトライ-Xを、超微粒子のなめらかさを求める方はイルフォードのデルタ 400をおすすめします。
ちなみに、公式サイトに「このフィルムは非常にスキャナーに優しく、スキャン時には、画像のハイライトにノイズが出づらいです。(中略)フィルムの裏面には傷を防止するためのゼラチンコーティングがあり、スキャンするときも安心です」と書いてあるように、JCH StreetPan 400はご自宅でフィルムをスキャンする方に優しい仕様となっています。フィルムの厚みもしっかりしていますし、ご自宅でモノクロフィルムをスキャンされる方にはもってこいです。
自分で現像をされる方は、公式ページに推奨の現像液、現像時間が掲載されていますのでそちらをご覧になってください。
【使用機材】
カメラ:Nikon NewFM2
Ai Nikkor 50mm f/1.4S
Ai Nikkor 28mm f/2.8S
<関連サイト>
サンアイ 蔵CURA
JAPAN CAMERA HUNTER