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銀塩手帖

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銀塩手帖
フィルム、銀塩写真に関する情報を記録していきます。
公開日:2018/08/06

味わいあるカメラとオールドレンズのイラスト!三宝カメラの女性スタッフが描いたイラストレーションがすごい!

photo & text 松岡佳枝


「味のある」という使い古された言葉があるが、あえて使わずにはいられない「味のある」イラスト。「カメラ」と言えばデジタルカメラを指すことが当たり前となっている昨今、写真で見るよりも趣きや立体感があり、その手触りまで伝わってくるようなイラストの存在感は抜群だ。完成形のイラストはモノクロでとてもシンプルに見えるが、幾重にも塗り重ねられた鉛筆のタッチが、どれだけの手間をかけて描かれたものかを現している。

デジタルカメラに装着されているのは、いわゆる「オールドレンズ」。いま、フィルムカメラ時代を知らない世代にも、このオールドレンズが受けているという。最新のデジタルカメラと、長い時を経ていまも存在するオールドレンズのマッチングは、イラスト化されることでより深みを感じさせ、味わい深い「モノ」としての魅力を放っている。



三宝カメラスタッフ 清水亜里子さん

このイラストを描いたのは、東京・目黒区にある中古カメラ店「三宝カメラ」の清水さん。学生時代に美術(造形表現)を学んだという。

──「大学では美術全般を学んだ後、実は彫刻を学んでいました。カメラは直線的で描きやすいのですが、レンズが難しいですね。実物や写真を見ながら描いています。」(清水さん)



イラストは清水さんが鉛筆を使って、ひとつひとつ丁寧に描いている。カメラだけでなく、レンズも、もちろんすべての部分が手描きであるため、刻印なども丁寧に描かれている。デジタルとは違った、手仕事独特の「ゆらぎ」が見るものの心をより魅きつける。

 

機械にぬくもりをあたえる清水さんの作品たち

オールドレンズがカメラを取り囲む「オールドレンズ曼荼羅」は、2018年5月に開催された「オールドレンズフェス」で実際に使われたもので、現在は店舗の外から見えるよう掲示されている。
現代のレンズとは違い、それぞれのスタイリングにとても個性のあるオールドレンズはこうしてイラスト化されることで、新たな魅力を纏う。

 

オールドレンズ・フェスで掲示したポスター





Nikkor-S Auto 55mm F1.2



Meritar 50mm f/2.9


Meyer-Optik Gorlitz Domiplan 50mm f2.8


Leitz Hektor 5cm F2.5

 

手書きで三宝カメラのフリーペーパーに親しみやすさを



──「お店が昨年(2017年)8月にリニューアルした際に、フリーペーパーを出そうということになり、カメラの説明をわかりやすく、かつ女性にも手にとってもらいやすいよう、かわいく作れないかと考え、手描きで作ることにしました。」(清水さん)
「スタッフから“やりたい”と提案された企画を積極的に採用しています」(写真左:三宝カメラ 飯塚社長)


三宝カメラでは、3ヶ月〜4ヶ月に一度、オリジナルのフリーペーパーを出している。カメラの基本や、デジタルカメラにオールドレンズを装着しての写真の楽しみ方などが、イラストとともに丁寧に解説されており、店舗に来る人たちが持ち帰る。

──「店舗だけでなく、オールドレンズフェスの会場でも配布させていただいたのですが、嬉しそうに持ち帰ってくださるお客さまの姿を目の当たりにして、私も嬉しくなりました。もともと、絵を描くことは好きでしたが、特に模写が好きなんです。写真や実物を見ながら描くのは、とても楽しいですね。カメラやレンズの黒いモデルや、黒いパーツはよいのですが、シルバー部分の金属の質感や、レンズのガラスの質感を表現するのは難しく、特にズミクロン5cmなどは苦労しました。いくつも描いているうちに、私自身もオールドレンズに興味を持ち、いまでは自分でも持っています。」(清水さん)

カチっとしすぎない手描きならではのユルさと、人の手のぬくもりを感じる温かみは、人の手を渡ってきた中古カメラの販売店との相性がとてもよい。単なる「古くなって安いもの」ということではなく、三宝カメラの店舗そのものがひとつひとつの商品に愛情を持って接していることが伝わるはずだ。


これまで発行された三宝カメラのフリーペーパー



イラスト作成がきっかけでオールドレンズを使うように



──「これまで三宝カメラに勤めていながら、業務に専念していることもあり、さほど写真は撮ってきませんでした。でも、こうしてイラストを描くようになって、私自身もオールドレンズを使い始めたんです。小西六のHEXER 50mm F3.5は、小さくてかわいらしいそのスタイルで選びました。最近は水族館に出かけた際にカメラを持っていき、撮影しましたね。今後もイラストを描くことは続けていきたいと思っています。このイラストを生かして、フリーペーパーだけでなく、グッズなども展開できないかなと考えているところです。」(清水さん)


清水さんの愛機「オリンパス PEN E-PL8とHEXER 50mm F3.5」


写真左から、店長の矢中さん、清水さん、社長の飯塚さん


三宝カメラ



三宝カメラは1975年(昭和50年)創業。43年の歴史を持つ老舗の中古カメラ店。2017年8月にリニューアルオープン。ガラスばりの明るく広々とした店舗に、デジタル、フィルム問わず、さまざまな中古カメラとレンズが並ぶ。もちろんフィルムも多数の銘柄を取り揃えているだけでなく、店舗奥はテーブルと椅子が並ぶ、談話スペースとなっている。試写用のセットも用意されているなど、「撮る人、撮りたい人、カメラを買いたい人、知りたい人」への細やかな配慮が嬉しい。20代女性の来店も多く、カメラグッズも取り揃える。
 

<ショップ情報>

三宝カメラ

住所:東京都目黒区目黒本町2-5-5 和幸ビル1階
電話:03-3793-2273
営業時間:平日 9:30〜19:00、日曜日 10:00〜18:00(祝日、年末年始は休業)
最寄り駅:東急東横線学芸大学駅(駅から徒歩10〜12分)
提携駐車場あり。店舗前に自転車・オートバイの駐輪可
ショップサイト:http://www.sanpou.ne.jp/

CAMERA fanで三宝カメラの商品を検索する:
https://camerafan.jp/sanpou/itemlist.php


 
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  2014/07/04
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