アジアンMFレンズここだけの話
公開日:2024/06/24
第8回 7Artisans 18mm F6.3 II 雨の日はボディキャップレンズ
Photo & Text :澤村徹
APS-C向けのボディキャップレンズで、主要マウントに対応している。従来モデルはパンフォーカスレンズだったが、第2世代はピントリング搭載で最短0.3mまで寄れる。35mm判換算28mm相当だ。
<スペック>
価格:9,000円
ブランド:七工匠
マウント:富士フイルムXマウント
フォーカス:MF
レンズ構成:5群6枚
フィルター径:装着不可
フォーマット:APS-C
曇天、しかも小雨まじりだ。せっかく新幹線で四時間以上もかけてやって来たというのに。時刻は昼どき。まだホテルにチェックインはできない。荷物だけ預け、カメラバッグを背負って喫茶店に入る。サンドイッチを食べながら、窓の外を見る。振りは強くない。でも、雨は雨だ。
こんなこともあろうかと、この日のファーストレンズは7Artisans 18mm F6.3 IIにした。悪天候でもハンドリングしやすいAPS-C用の広角レンズである。
外は小雨まじり、このレンズは当たりだった。
何しろこのレンズ、シャッターを切るだけでいい。カメラに貼り付くようなボディキャップレンズ。35mm判換算28ミリ相当で、絞りはF6.3固定。パンフォーカスなのでピント合わせもいらない。ライブビュー画面で構図を決め、シャッターを切るだけ。
傘を差しながら片手で撮れるのだ。
厚い雲が垂れ込めた空の下、「パンフォーカス最高!」とテンションあげあげで撮影する。日頃からMFレンズばかり使っているので、ピント合わせ不要、絞り調整不要は驚くほどラクだ。ラクすぎて撮影をさぼっているような気分にさえなる。
しかも軽い。このときのボディはAPS-Cミラーレスの富士フイルムX-S10。そこにボディキャップレンズの7Artisans 18mm F6.3 IIがついている。コンデジ感覚のセットアップだ。片手持ちでもしっかりホールドできるし、レンズが傘からはみ出して濡れる心配も少ない。
その一方で、近接もいけるのだ。
本レンズは第2世代になってからピントリングを搭載した。これで最短0.3mまで寄れるのだ。雨中撮影ではそこまでがんばる気になれないが、ガチピンがほしいならしっかりとピント合わせできる。ボディキャップレンズは手軽さを前面に押し出した製品が多いが、このレンズに関しては本格的な作りだ。ちなみに、金属製の外装である。
撮り出してから二時間ほどが経過しただろうか。雨が止み、晴れ間が見えてきた。あれだけ分厚く黒かった雲が消え、青空が広がる。さすがオレ、日頃の行いが良いからな、と思う。直後、本当にそうならここに着いたときから晴れているはずとセルフツッコミを入れておく。さあ、がんばって撮っていこう。X-S10 + 7Artisans 18mm F6.3 II
絞り優先AE F6.3 1/350秒 -0.67EV ISO160 AWB RAW
手前のクルーザーから奥のクレーンまで、全域にわたってピントが合う。周辺はいくぶん甘くなるが、中心部のシャープさは見事なものだ。
X-S10 + 7Artisans 18mm F6.3 II
絞り優先AE F6.3 1/160秒 -1.33EV ISO160 AWB RAW
雨を気にしながらの撮影。ガチガチにフレーミングすることはせず、目についたものをざっくりと捉えていく。35mm判換算28mm相当なので、フィーリング優先の手軽なスナップで扱いやすい。
X-S10 + 7Artisans 18mm F6.3 II
絞り優先AE F6.3 1/40秒 -0.67EV ISO160 AWB RAW
パンフォーカスタイプのレンズだが、ピントリングを搭載。こうした近接撮影でていねいにピント合わせできる。安価なレンズのわりに実用性が高い。
X-S10 + 7Artisans 18mm F6.3 II
絞り優先AE F6.3 1/500秒 -0.67EV ISO160 AWB RAW
すっかり晴れた。雨の中で撮ったカットをチャラにして、晴天下でもう一度撮り直すべきだろうか。何か試されている気がする。
<関連サイト>
焦点工房
7Artisans 18mm F6.3 IIhttps://www.stkb.jp/shopdetail/000000001901/
<関連書籍>
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