アジアンMFレンズここだけの話
公開日:2024/08/05
第11回 Solaron-M 35mm f2.0 Spherical 7枚玉コピーならフードも付くだろ?
Photo & Text :澤村徹
7枚玉を再現した本レンズは、外観も第3世代のSummicron 35mmF2を模している。もしやと思いライカの純正フード12524を装着してみたら、問題なく取り付けることができた。
<スペック>
価格:132,000円
ブランド:Polar
マウント:ライカMマウント
フォーカス:MF
レンズ構成:5群7枚
フィルター径:39mm
フォーマット:フルサイズ
レンズフードを買うか否か、悩んでいた。自らの名誉のために言わせてほしい。自分はけっして仕事道具を買い惜しむような吝嗇家ではない。仕事のために必要とあらば、カメラにせよレンズにせよ、躊躇なく購入する。単なるテスト撮影のためにさえ出費は惜しまない。でも今回はちがうのだ。
持っていないレンズのフード、正確にはまだ発売されていないレンズのフードを買おうというのだ。購入ボタンをクリックしていいものか、戸惑いを隠せない。
ことの発端は復刻レンズだ。ポーラという中国のレンズブランドから、7枚玉の復刻レンズ、Solaron-M 35mm f2.0 Sphericalが登場するという。7枚玉とは1980年に登場した第3世代のSummicron 35mmF2のことだ。Summicron 35mmF2というレンズは、8枚玉→6枚玉→7枚玉と進化し、オールドレンズ的には初代の8枚玉がもっとも人気が高い。6枚玉も手頃でコンパクトな35mmレンズとして定評があった。ただこれまで、7枚玉はさほど注目されてこなかったレンズだ。それを復刻するというのだから心中穏やかでない。
7枚玉って、そんなに有名だっけ?
安定した描写でユーザーの多いレンズとは認識しているが、オールドレンズという観点からは復刻するほどかと疑問がわいた。ただひとつ、わかっていることがある。
7枚玉に純正フード12524を付けた姿は超絶かっこいい!
販売代理店に連絡し、ソラロンの貸出をお願いする。サンプル品が届き次第、貸してもらえることになった。SNSに流れてくるソラロンのブツカットを眺め、この製品はレンズ構成だけでなく、外観も7枚玉に似せていることがわかった。ふと思う。もしかして付くのか?
復刻7枚玉に本家12524を付けたら、俺ヒーローになれるんじゃね?
もちろん、なれなかった。自腹で12524を買い、ソラロンに付けてブツ撮り。それを「アジアンMFレンズ・ベストセレクション」に掲載したが、誰ひとりとして気づいてくれなかった。もしくは華麗な既読スルー。復刻レンズとオリジナルフードの競演、なぜこのおもしろさが伝わらないのか。それでもこうしてエッセイという形で披露する機会があり、ブツ撮り以降、一度も日の目を見ていない自腹で買った12524もよろこんでいることだろう。ソラロンによろしく。Leica M11 + Solaron-M 35mm f2.0 Spherical
絞り優先AE F8 1/250秒 ISO64 AWB RAW
高架の裏に目を凝らすと、シャドウの奥からディテールが浮き上がる。いかにもオールドライカっぽい描き方をうまく踏襲している。
Leica M11 + Solaron-M 35mm f2.0 Spherical
絞り優先AE F2 1/750秒 ISO64 AWB RAW
開放近接で南天を撮影した。中心部のシャープネスは悪くない。後ボケはやや硬く、ざわつきがある。本家に似た描写かと問われると、返答が難しい。
Leica M11 + Solaron-M 35mm f2.0 Spherical
絞り優先AE F2 1/2000秒 -0.67EV ISO64 AWB RAW
こういう寂れた被写体はオールドライカレンズが得意とするところだが、復刻したソラロンもうまく雰囲気を捉えてくれる。葉の色付き具合がいい。
Leica M11 + Solaron-M 35mm f2.0 Spherical
絞り優先AE F5.6 1/125秒 ISO64 AWB RAW
燻るようなシャドウが好みだ。身も蓋もない言い方だが、こういう絵が撮れるレンズは正義だと思う。
<関連サイト>
Polar
Solaron-M 35mm f2.0 Spherical
https://2ndfocus.com/products/polar-solaron-35mm-f20
<関連書籍>
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