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オールドレンズ・ライフ

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オールドレンズ・ライフ
公開日:2012/07/25

Q&A・その2 覚えておきたい オールドレンズの基礎用語

photo & text 澤村 徹

オールドレンズの世界に触れると、耳慣れない専門用語に戸惑うことがある。これらを理解しておけば、オールドレンズがより身近に感じられるはずだ



Question  5

実絞りと自動絞りを理解しよう


マウントアダプターを使ったオールドレンズ撮影は、実絞りの絞り優先AEというセッティングが基本だ。この実絞りとは、絞りリングを手動で回すと、設定値に応じて絞り羽根が絞り込まれる状態のことだ。実絞りは直感的でわかりやすい反面、絞り羽根が絞り込まれるため、ファインダーが暗くなってしまう。この点を改善したのが自動絞りだ。絞りを常時開放状態にしておき、シャッターを切るときだけ絞り込まれるように工夫をこらした。一眼レフカメラが古くから採用し、現在のデジタル一眼レフにも用いられている。ただし、マウントアダプター経由で撮影するときは、レンズの自動絞りを無効化しないと常時開放撮影になってしまう。代表的な例がM42マウントレンズで、M42マウントアダプターはレンズ底面の自動絞り連動ピンを押し込み、自動絞りを無効化するようになっている。



アダプター使用時は実絞りで
実絞り状態のレンズは、絞りリングを回すと絞り羽根が絞り込まれていく。マウントアダプター使用時は、この状態で撮影する。
自動絞り連動ピンを押し込む
M42マウントやローライQBMのレンズは、後玉近辺に自動絞り連動ピンがある。アダプターでこのピンを押し込み、実絞りで撮影する。



Question  6

オーバーインフとは?

オーバーインフとは、レンズの∞マークの手前で無限遠が出て、∞マークに合わせた状態では無限遠を行き過ぎる状態のことだ。中国製のマウントアダプターは、規定のフランジバックよりも若干短めに設計し、オーバーインフ気味になっている製品が多い。このオーバーインフ設計の利点はふたつある。オールドレンズは経年変化や個体差があるので、オーバーインフ気味だと確実に無限遠が出せる。また、ライブビューは拡大表示でかなり遠くのものにピント合わせできるので、オーバーインフだとギリギリのところまで追いかけることが可能だ。その反面、デメリットもある。レンズの∞マークで無限遠を行き過ぎてしまうので、遠景撮影でいちいちピントを確認しなくてはならない。オーバーインフは一長一短あるものの、上級者にはおおむね評判のよいセッティングだ。



Cマウントはオーバーインフ気味
シネレンズはフランジバックのバラつきが大きいため、Cマウントアダプターはオーバーインフ気味に設計した製品が多い。
∞マークで無限遠を超える
オーバーインフ気味のアダプターを使うと、レンズの∞マークで無限遠を超えてしまう。遠景でも丁寧にピントを合わせよう



Question  7

「MC」は何の略?

1960年代以降のオールドレンズは、レンズ名に「MC」と付いたものをよく見かける。この「MC」とはマルチコーティング(Multi Coating)の略だ。マルチコーティングを施したレンズは逆光性能にすぐれ、発色やコントラストが安定している。現行レンズでは当たり前の仕様だが、当時はシングルコーティングが一般的であり、マルチコーディングは大きなアドバンテージだった。そのためレンズに「MC」と刻印し、その強みをアピールしていたわけだ。マルチコーティングはレンズメーカーごとに独自性があり、カールツァイスのT*(ティースター)、ペンタックスのSMC、ローライのHFTなどが有名だ。シングルコーティングが青みを帯びているのに対し、マルチコーディングはオレンジ、マゼンタ、グリーンなど、濃厚な色が混ざり合う。レンズを見慣れてくると、前玉を見ただけで見分けられるようになる。



MCは濃厚な色合い
マルチコーティングレンズは赤や緑の濃厚な色合いだ。逆光条件でも比較的フレアが出づらく、ハイコントラストで高発色な写りだ。
青いレンズは単層コート
シングルコーティングのレンズは前玉が青っぽい。逆光に弱いのでレンズフードは必須だ。無色透明のレンズはノンコーティングとなる。



Question  8

沈胴レンズは沈めても大丈夫?

ライカLマウントのレンズには、沈胴式と呼ばれるスタイルがある。これはレンズの鏡胴が伸縮し、ボディ側に格納できるタイプのレンズだ。バルナックライカ時代のエルマー50mmF3.5が代表的で、沈胴エルマーと呼ばれることが多い。エルマー以外では、ズマール50mmF2、ズミター50mmF2が沈胴式だ。
沈胴式レンズは独特のスタイルだが、マウントアダプター経由でミラーレス機に装着できる。撮影方法も実絞りの絞り優先AEで問題ない。ただし、ミラーレス機に付けた状態で沈胴するのは御法度だ。ミラーレス機はボディ内部が浅いので、沈胴するとレンズの底部がボディ内部で干渉してしまう。これはボディの故障につながりかねないので、けっして沈胴しないように注意しよう。なお、一部のマウントアダプターは、沈胴式レンズが沈胴しないようにアダプター底面にガードが付いている。



沈胴式レンズも装着OK
沈胴式レンズはオールドレンズのなかでもひときわ個性的なデザインだ。見た目は奇異だが、装着および撮影は他のレンズと変わりない。
ミラーレス機は沈胴禁止
ミラーレス機は、いわゆる懐の浅いボディだ。沈胴式レンズをボディ側に押し込むと、内部干渉して故障の原因になりかねない。

<プロフィール>


澤村 徹(さわむら てつ)
1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。オールドレンズ撮影、デジカメドレスアップ、デジタル赤外線写真など、こだわり派向けのカメラホビーを得意とする。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線写真、オールドレンズ撮影にて作品を制作。近著は玄光社「アジアンMFレンズ・ベストセレクション」「オールドレンズを快適に使うためのマウントアダプター活用ガイド」、ホビージャパン「デジタル赤外線写真マスターブック」他多数。

 

<著書>


アジアンMFレンズ・ベストセレクション



オールドレンズを快適に使うためのマウントアダプター活用ガイド



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