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オールドレンズ・ライフ

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オールドレンズ・ライフ
公開日:2012/09/10

Q&A・その4 レンズ描写と画質についての素朴な疑問

photo & text 澤村 徹

デジタル対応の現行レンズと異なり、オールドレンズは設計の古いレンズだ。
そのため、予期せぬ描写に出くわすこともある。


Question  13

写真の周辺部が赤い


ソニーNEXシリーズと広角のオールドレンズを組み合わせると、画像の周辺部が赤やマゼンタで色かぶりする現象が見られる。これはレンズとボディの相性問題といえるだろう。NEXシリーズはフランジバックが短いため、イメージセンサーの周辺部は光が急角度で射し込む。特に広角レンズでは角度が大きく、光量不足が発生しやすい。純正レンズはこの点を踏まえて収差補正されているが、オールドレンズにとっては想定外の撮影環境だ。そのため色かぶりが発生するというのが一般的な見方である。28mmレンズではさほど目立たないが、21mmレンズになると明らかに色がかぶる。現状ではこの問題を解消する手立てがないので、色かぶりが目立たないように背景を工夫して撮るか、撮影後にパソコン上で編集するしかない。いっそ割り切って、モノクロ化してトーンを堪能するという手もわるくない。



周辺に色かぶりが発生
NEX-5と21mmレンズを組み合わせたところ、周辺が赤く色かぶりした。絞りを絞り込んでも色のかぶり具合に大きな変化は見られない。
APS-Cならではの悩み
NEXシリーズは大きめのAPS-Cセンサーを搭載しているため、周辺部の受光が急角度になる。そのため光量不足で色がかぶるといわれている



Question  14

写真の四隅が暗い

オールドレンズ撮影で四隅が暗い場合は、主にふたつの理由が考えられる。ひとつは周辺光量落ちだ。オールドレンズは現行レンズほど収差補正が進んでいなかったため、周辺光量落ちの顕著なレンズが多々見受けられる。こうしたレンズを開放近辺で撮影すると、四隅がうっすらと暗くなるわけだ。周辺光量落ちは絞りを絞り込むと改善される。レンズの種類にもよるが、F5.6あたりまで絞れば隅々まで明るく撮れるだろう。ふたつめの理由はケラレだ。Cマウントレンズのようにイメージサークルの小さいレンズを付けると、画像の四隅にケラレが発生する。レンズのイメージサークルよりもイメージセンサーのサイズが大きいと、四隅に光が届かず、ケラレてしまうわけだ。この場合は改善策がなく、背景を工夫して撮るか、撮影後にトリミングしてケラレの部分を取り除くことになるだろう。



周辺光量落ちは絞って改善
オールドレンズは周辺光量落ちの顕著なレンズが少なくない。これも味わいの一部だが、気になる場合は絞り込んで撮影しよう。
シネレンズはケラレに注意
広角系のCマウントレンズはケラレが発生しやすい。特に25mm以下のCマウントレンズは、ある程度のケラレを覚悟しておこう。



Question  15

無限遠が出ない!

ピントリングの∞マークに合わせても、遠景にピントが合わないことがある。これを「無限遠が出ない」という。レンズの不具合で無限遠が出ないこともあるが、オールドレンズ撮影ではまずマウントアダプターの精度を確認してみよう。加工精度の問題で本来のフランジバックよりも厚みがあると、∞マークに合わせても無限遠が出ない。販売店に相談して問題のない製品と交換してもらうのがよいだろう。もうひとつ考えられるケースは、マウントアダプターの複数装着だ。たとえばフォクトレンダーのプロミネントレンズをミラーレス機に付ける場合、プロミネント-ライカMアダプターとミラーレス機用ライカMアダプターを2段重ねする。このとき加工精度の誤差が積み重なり、本来のフランジバックを超えてしまうことがあるのだ。複数装着するときは、オーバーインフ気味のアダプターを使うとよいだろう。



遠景がボンヤリ写る
無限遠が出てないと、遠景撮影でわずかにピンぼけ状態になる。自力解決したいときは、絞り込んで撮ると無限遠に届くことがある。
複数装着はほどほどに
マウントアダプターの複数装着は上級者にとっておなじみのテクニック。ただし、製造誤差が積み重なると無限遠が出ないので注意しよう。



Question  16

大口径レンズなのにボケない

オールドレンズは大口径レンズの宝庫だ。シネレンズのアンジェニュー25mmF0.95、マクロスイター26mmF1.1を筆頭に、一眼レフ用レンズにもF1.2クラスのレンズがごろごろしている。ただし、マイクロフォーサーズに大口径レンズを付けたとき、思いのほかボケ味が小さく肩すかしを食らった経験はないだろうか。これにはいくつか理由がある。まず、マイクロフォーサーズのイメージセンサーはフルサイズ機ほど大きくないので、どうしてもボケ量を稼ぎづらい。また、シネレンズの25mmクラスはフィルムムービーカメラにとって標準レンズという位置づけだが、焦点距離自体は広角に類する値だ。広角レンズがパンフォーカス気味になるのは、カメラファンであればよくご存じだろう。いくら大口径シネレンズといえども、ノクティルクス50mmF0.95のようなボケ量は期待できない。




あくまでも焦点距離に注目
アンジェニュー25mmF0.95はマイクロフォーサーズに付けると50mm相当になる。ただし、25mmレンズなので、ボケ量に過剰の期待は禁物だ。
F0.95の開放描写
同上のレンズをM4/3で開放撮影してみた。ミラーレス機としては大きなボケ量だが、フルサイズと大口径レンズの組み合わせにはかなわない。

<プロフィール>


澤村 徹(さわむら てつ)
1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。オールドレンズ撮影、デジカメドレスアップ、デジタル赤外線写真など、こだわり派向けのカメラホビーを得意とする。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線写真、オールドレンズ撮影にて作品を制作。近著は玄光社「アジアンMFレンズ・ベストセレクション」「オールドレンズを快適に使うためのマウントアダプター活用ガイド」、ホビージャパン「デジタル赤外線写真マスターブック」他多数。

 

<著書>


アジアンMFレンズ・ベストセレクション



オールドレンズを快適に使うためのマウントアダプター活用ガイド



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