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イベントレポート
公開日:2024/10/31

展示レポート日本カメラ博物館・特別展「19世紀から21世紀へ とびだす!ひろがる! ステレオ&パノラマカメラの歴史」

Text & Photo CAMERA fan編集部


日本カメラ博物館にて、特別展「19世紀から21世紀へ とびだす!ひろがる! ステレオ&パノラマカメラの歴史」が開催されています。
みなさんはステレオカメラをご存知でしょうか?ステレオカメラとは、2つのレンズを左右に並べて1つの被写体を撮影するカメラです。撮影した2枚の写真を、ビューワーなどを使用して左右それぞれの眼で鑑賞すると、被写体を立体に見ることができます。これがステレオ写真です。
現在では、XR(クロスリアリティ)、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)など、テクノロジーの進化で、映像をよりリアルに体験することができるようになりました。スマートフォンにゴーグルを付ければ、簡単に3D動画を観られますよね。

『実は、このような体験は、写真が生まれた1830年代、つまり江戸時代からチャレンジされてきたのです。「平面の写真をより現実的、立体的に観たい!」という願望は、今も昔も変わらないのです。ステレオカメラはその姿形もとても面白いので、ぜひ観に来て楽しんでいただきたいです』(日本カメラ博物館 学芸員 井口芳夫さん)

もうひとつの展示であるパノラマカメラは、円形や、横長により広い範囲を撮るカメラ。これらも、1850年代から作られてきました。
本記事では、特別展で展示されている製品からピックアップしてご紹介します。

 

特別展「19世紀から21世紀へ とびだす!ひろがる! ステレオ&パノラマカメラの歴史」

 

ステレオカメラ

初期のステレオカメラ


ステレオカメラ
メーカー:不明
1875(明治8)年
乾板/110×190mm
画面サイズ107×92mmを2枚撮影できる。


シャンブル オートマチック ステレオ
メーカー:アドルフ・ベルチュ(フランス)
乾板/66×140mm
シャッターは小孔の前に付けられた回転式フラップで1本の金具で2つのシャッターが同時に開閉される。ファインダーもついておりブラックメタリック仕上げ。スチームパンク風で存在感がすごい。


ステレオ フォトスフェール
メーカー:フランセーズ・ド・フォトグラフィー(フランス)
乾板/90×180mm
ちょっとセクシーな形の金属製カメラ。フォトスフェールというカメラのステレオカメラバージョン。レンズ内部で作動するスフェリカルシャッター。シャッタースピードの変速が可能。


江戸時代にステレオカメラで撮影された写真を展示。専用メガネを借りて立体に観ることができる。


遣米使節団
発行:C.D.フレドリックス社。ニューヨーク
撮影:フレドリックス
1890年
左は使節団の財務官、石川鑑吉。隣は兵士の阪本泰吉郎、右は兵士のTsumedo Yama(不詳)。
「JAPANESE EMBASSY.」のシリーズより




インターナショナル ステレオスコープ
1900年代に使われた最高級品のステレオビュワー。



小型化され持ち運びが便利になったステレオカメラ




イカ ステレオ イデアール
メーカー:イカ(ドイツ)
1910年(明治43)年
乾板/60mm130mm
「ステレオ・イデアール」には、9×18センチ判という大型カメラと、小型の6×13センチ判の2種類があるが、本機は小型のほう。小型化されてはいるがこの時代はまだフィルムではなく乾板を使用していた。



フィルムカメラ時代のステレオカメラ


ステレオ ホークアイ 5型
メーカー:イーストマン・コダック(アメリカ)
101フィルム/90×90mm
この頃からステレオカメラは、折りたたみ式で小型化されて持ち運びが便利になった。また、ロールフィルムを使用して連続撮影が可能になっている。乾板ではないため落下して壊れる心配もなくなった。


コダック ステレオカメラ
イーストマン・コダック(アメリカ)
1954(昭和29)年
135フィルム(35mm)/23×24mm
この時代になるとグッと近代的になる。カメラ上部で各操作が可能。シャッターはフラッシュ・ディアル200。B(バルブ)、1/25〜1/200秒、シンクロ付き。



デジタルのステレオカメラ


写真上:ルミックス GH2 + H-FT012
パナソニック(日本)
2010(平成22)年
SDカード/1,605万画素
専用交換3Dレンズ「H-FT012」を使用するとことで3D写真が撮影可能なマイクロフォーサーズマウントのミラーレス一眼カメラ。

写真下:ルミックス DMC-3D1
パナソニック(日本)
2012(平成24)年
SDカード/1,210万画素
2つのレンズと撮像素子によって、3D撮影のほか、広角と望遠、静止画などが同時に撮影可能なコンパクトデジタルカメラ。


 

パノラマカメラ

初期のパノラマカメラ




ベル ストレートパノラマ
ベルカメラ(アメリカ)
1908(明治41)年
90ミリ幅ロールフィルム/90×300ミリ
広角レンズを使用して、横長の画面を撮影可能。内部の布製マスクを移動すればポストカードサイズも写せる。


ワイドラックス FV VI
パノンカメラ商工(日本)
1959(昭和35)年
135フィルム/24×60mm
レンズ部が回転することで広角に撮影するカメラ。レンズの回転速度は、1/10、1/100、1/250秒。レンズは、ラックス26mmF2.8。35mmフィルムで18枚撮影できる。


ワイドラックス 35-ZIA
パノンカメラ商工(日本)
1958(昭和33)年
135フィルム/24×245mm
ミラー回転式のパノラマ撮影用カメラ。かなり特殊な設計で約360度の範囲を撮影可能。撮影者が横にいると写ってしまうので、ファインダーは潜望鏡式で、全周囲を確認できる。


ワイドラックスは、カメラファンの記事でもご紹介しています。
パノラマカメラ特集 第1回
https://camerafan.jp/cc.php?i=31
パノラマカメラ特集 第2回
https://camerafan.jp/cc.php?i=33



写真左:TX-1
富士写真フイルム(現・富士フイルム)(日本)
1998(平成10)年
135フィルム/24×65mm
35mmフィルムを使用する、距離系連動式レンジファインダーカメラ。TX-1のボディはチタン製。レンズ交換も可能で45mmと90mmがラインナップされた。現在も中古市場では人気の機種である。

写真左:TX-2
富士写真フイルム(現・富士フイルム)(日本)
2003(平成15)年
135フィルム/24×65mm
TX-1の改良機。シャッタースピードをファインダー内で確認可能になったり、各種機能設定をボディ背面の MODEボタンに集約して、露出補正、AFB、多重露光などを設定できるようになった。レンズは新たに30mmが用意された。



本展示では、この他にも多くのステレオカメラとパノラマカメラが展示されています。今と昔をつなげる歴史的カメラを楽しんでみてはいかがでしょうか。


 

<展覧会概要>

日本カメラ博物館 特別展

「19世紀から21世紀へ とびだす!ひろがる! ステレオ&パノラマカメラの歴史」

会期:2024年10月29日(火)〜 2025年2月2日(日)
場所:日本カメラ博物館
住所:〒102-0082 東京都千代田区一番町25番地 JCIIビル
日本カメラ博物館:https://www.jcii-cameramuseum.jp/museum/2024/09/19/35897/

詳細はこちらから
https://camerafan.jp/cc.php?i=1061

<カメラファンがオススメする書籍>


フィルムカメラ・ライフ 2024−2025

 
IDEA of Photography 撮影アイデアの極意」南雲暁彦・著


「個性あふれる"私らしい"写真を撮る方法」野寺治孝・著

これからフィルムカメラをはじめたい人のためのガイドブック

フィルムカメラ・スタートブック」大村祐里子・著
 
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